Vol.1 市光初の技術満載

おしゃれなコンパクトミニバン新型シエンタ、LED仕様

昨年、2代目へフルモデルチェンジしたトヨタのコンパクトミニバン、シエンタの快進撃が続いています。初代のシエンタはモデル末期の月間平均販売台数が1200台前後に過ぎませんでしたが、新型登場から当初設定した月販目標7000台を軽くクリアし、実に8倍近くの約9500台を記録するヒット車種となっています。今回、市光が受注したのは、シエンタのLEDヘッドランプ仕様。ランプの輪郭をくっきりと際立たせる、力強いデザインのクリアランスランプが大きな特徴です。今回は、エッジの効いたLEDクリアランスランプが特徴の、新型シエンタLEDヘッドランプを開発した、お二人に製品開発に当たっての苦労話をうかがいました。

LED仕様

編集部:製品の特徴を教えてください。

今回、市光が受注したのは、シエンタのヘッドランプのLED仕様です。特に”LEDランプ パッケージ”は、ヘッドライトやリアコンビネーションランプのデザインも変わり、クルマの雰囲気が大きく変わることから、人気があります。”LEDランプ パッケージ”のLEDヘッドライトは、一つの光源がロー&ハイビームを兼ねるBi(バイ)ファンクション式。また、ライン状に光るLEDのクリアランスランプを装備しています。
LEDが装備されているモデルとハロゲンのモデルでは、全体の雰囲気が全く異なります。インパクトのあるデザインのLEDランプがクルマ全体のイメージアップに貢献しているのが分かると思います。

市光初の技術が盛りだくさん。

「LEDクリアランスランプ」・・・幅広く力強いエッジの効いたデザイン

従来品は導光棒のみの幅の狭い範囲が発光する製品でしたが、シエンタは幅の広い特徴的なデザインのLEDクリアランスランプを均一に光らせる事が難しかったですね。クリアランスランプの形状自体は当初から指示がありました。お客様からの要望は幅が広い全範囲を明暗差無く均一に光る事です。この部分は西畑さんとコミュニケーションを重ね、点灯見栄えを最優先するため最適なLEDの配置をPCによるシミュレーションと、実際のモックアップ作成を繰り返しながら、見栄えの検証を重ね玉成していく地道な作業です。

通常はモックアップ作成は1度で済ませる見栄えの検証を、今回は4回繰り返すことで満足できる状態にもって行く事が出来ました。また、受注当時はLED6個分、基盤は3枚分のコストを想定していましたが、均一な光り方を確保しながらも、LED4個、基盤は2枚と大きなコスト削減に繋げる事ができました。実際には、写真のように上半分は均一に、下側はグラデーションで処理しています。点灯見栄え優先のためにLEDの位置を優先したことで他の周辺部品との干渉が多く発生し、その周辺部品を調整し設計していくのは大変でした。お客様から「存在感があっていいね」と言われた時は本当にうれしかったですね。

色々苦労はありましたが、結果的にはお客様には満足していただいたと思っています。実際の製品がマーケットに出た後、お客様の設計担当者さんから、「実際に夜走っている新型シエンタを見ると本当にきれいだ」と言って戴けました。エンジニア冥利に尽きますね。

「一体構造レンズ」・・・ひとつの大きな目に見せる。

>シエンタに使われたバイファンクションユニットは、アルファードで使われたユニットの派生製品です。この部分は研究開発が主体で設計しました。アルファードでは2つのレンズが別体でしたが、シエンタでは多色成形による2層構造となり、市光初の一体成形としたのが特徴です。お客様からは「ひとつの大きな目として見せたい」という要望がありました。このための2層構造による一体成形レンズであり、このレンズを囲む周囲の幾何学シボや、LEDクリアランスランプも、ランプ全体の一体感を強調するデザインとしています。

「新幾何学シボ」・・・従来に無い質感を実現。

こちらも市光初となる新幾何学シボ加工。得意先要求は、実際には平面にも関わらず従来にない立体的に見える質感でした。一般的な艶消しシボ加工は従来から使われていますが、ムラが出やすく、従来の加工の問題点でした。しかし新幾何学シボ加工では、様々な方向に光が反射する為ムラが分かりにくく、結果として生産性も向上します。実際には、一方向の模様が施されたマスキングシートを金型に貼り付け、金属を溶かす溶剤で部分的に侵食させる事で模様を作ります。その後最初とは異なる方向の模様が施されたマスキングシートを金型に貼り付け、再度金型を侵食。このように何層もの加工を経て写真のような立体的に見える質感を実現しています。単純な艶消しシボではなく、様々なパターンが生成できるため、今後はもっと幅広く使われていくだろうと思います。

際立つ細部のディティール。

シエンタのバンパーにある特徴的な黒い縁取りは、ランプの周囲にアイラインのように繋がる事によって、車体とランプを一体化させる事にも貢献しています。また、通常はターンランプのバルブが直接見えないよう、インナーレンズを装着するのが普通ですが、今回は、ターンランプのバルブを隠すため三角形の遮光パーツを採用しています。これは三角形の底辺2箇所だけで支える構造のため、まるで遮光パーツが空間に浮かんで見える様な不思議な効果を生んでいます。しかし、光学的に一番明るい部分を隠す構造なので、法規を満たすのが大変でした。

悔しさが、頑張りに繋がった

今回のプロジェクトは、競合他社に決まっていたところお客様の事情により、2つのランプメーカーに分割発注されました。当然ながら、ハロゲン仕様のみの受注となった競合他社もチカラを入れ、お客様に猛烈にアピールしています。また、お客様としても、2つのランプメーカーの別々の要件をまとめなければいけませんから、お客様自身にとっても当然負担は大きく、日々のプレッシャーには苦労しました。だからこそ私達は、市光の本当の力を見せつけたいと思って真剣に取り組みました。特にLEDクリアランスは、競合他社に負けたくないと思っていました。実際LED4個でこれだけバランスの良い光り方をする製品は無いと自負しています。また、お客様としても、2つのランプメーカーに別々に要件を伝えなければいけませんから、お客様にとっても当然負担は大きい。結果として、今回のプロジェクトは失敗だったと思われたくありませんからね。

編集部から

今回のシエンタと言うクルマ。コンパクトミニバンとしてかなり思い切った斬新なデザインにも関わらず、マーケットに確実に受け入れられている様です。実際、市光が受注したLED仕様は、計画段階で1500台程度でしたが、実際には4500台と順調な売り上げを続けています。今回の取材を通じて思ったのは、シエンタ自体の特徴あるデザインテイストが、ヘッドランプにも見事に反映されている。・・・という事でした。これはつまり、市光のエンジニアがシエンタの特徴あるデザインを理解し、ヘッドランプの設計にもこれらのデザイン要素を存分に反映させていると言う事実です。これこそが、正にお客様の要望に答えるという事ではないかと感じました。